浄土真宗ではお線香は香炉に寝かせます
お線香は立てるもの。そう考えていらっしゃる方は多くいるのではないかと思います。お仏壇でお参りをする際も、お線香の灰の状態を見ると「この家はお線香を寝かせているな」「この家はお線香を立てているな」とわかります。
浄土真宗では、本来お線香ではなく香炉に蛇腹状の溝をほり、そこに抹香(粉のお香)をいれ長時間にわたり香の香りを立ち昇らせるようにしておりました。と言うのも、本堂はお浄土の有様をあらわしたものですので、お浄土に常に立ち込める妙なる香りをあらわしていたのです。そしてまた、そこから鼻が詰まっていようと、背を向けていようと届くお香の香りに仏様の差別のないお慈悲を感じるための物です。しかし、一般寺院やご家庭ではなかなかそれは難しい。その代用品がお線香なのです。ですので、
お線香は立てないのではなく「立てる理由がない」のです。
ちなみに慶念寺では、法事などの際は抹香を用いています。下の写真を見ていただくと、立てない理由の一つがお分かりいただけるかもしれません。
抹香を入れた香炉
このように蛇腹状にして抹香を入れます。そして片方の端から火をつけると長時間にわたりお香の香りが立ち上ります(写真で1時間弱程度)
禅宗のお寺などでは、お線香の燃焼時間を1柱(ちゅう)といって座禅の目安などに用いるようです。ほかにも香食と言って仏様はお香の香りを召し上がるから、煙が高く立ち上るようにお線香を立てるという考え方もあるようです。
作法はマナーではありません
以前、テレビでマナー講師の方がお仏壇でのお線香のお供えの仕方をやっておりました。興味津々で見ておりますと、「基本は立てます。ただ、浄土真宗は2本に折って寝かせます。その際の火の向きは左に向けます」と言っていて、ガクッと来ました。形だけで理由がないのです。ちなみに香炉の大きさに対してお線香を折るだけであって、
折らずに入る香炉であればお線香を折る必要はありません。
火の向きも単純に右手で持って火をつけたら寝かせるときに火が左を向くだけの話です。火の向きは問題ではないことは上の写真でお分かりいただけるかと思います。
作法と言うのは、仏様に対しての敬いの心の現れです。何のためにするのかを今一度考え、後付けのマナーに惑わされないようにしましょう。